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赤目四十八瀧心中未遂

2.5
寺島しのぶ(赤目四十八瀧心中未遂) 映画
寺島しのぶ(赤目四十八瀧心中未遂)
『赤目四十八瀧心中未遂』は、2003年10月25日公開。監督は荒戸源次郎、主演は大西滝次郎、寺島しのぶ。

『赤目四十八瀧心中未遂』ってどんな映画?

世間から見捨てられたような街、尼崎の片隅。どす黒い欲望と、生臭い体臭が漂うドブ川のほとりで、泥にまみれながらも互いの肉体を貪り合う男女がいた。車谷長吉の直木賞受賞作を、伝説のプロデューサーであり映画監督の荒戸源次郎が映画化した。観る者の肌にネットリとまとわりつくような、昭和の残り香と人間の業(ごう)を剥き出しにした壮絶な純愛ドラマである。

物語の主人公は、過去を捨てて尼崎の安アパートに流れ着いた青年・生島(大西滝次郎)。彼がそこで出会うのが、ヤクザの兄を持ち、全身に死の匂いと圧倒的なエロティシズムをまとった在日朝鮮人の女性・綾(寺島しのぶ)。

見どころは、映画初主演にして文字通り命を削るような芝居を見せた寺島の圧倒的な存在感。生島を「お兄ちゃん」と呼びながら、ずるずると奈落の底へ引きずり込んでいくその瞳は、狂気と純粋さが同居している。生島が彼女の背中に彫られた未完成の刺青に触れるとき、2人の孤独は部屋の壁を越え、現世からの脱出という名の「心中」へと加速していく。

鈴木棟也の脚本と荒戸監督のカメラは、アパートを取り巻く変質者やはみ出し者たちを、まるで地獄の絵巻物のようにグロテスク、かつ愛おしく活写する。
生島が働く串カツ屋の雇い主・勢子(大楠道代)の冷徹な生活感、怪しげな彫師・彫眉(内田裕也)が放つ不穏な空気、そして綾の兄・真田(大楽源太)に怯える舎弟の業(大森南朋)や爺公(森下能幸)らの小市民的な悪意。さらに、新世界(赤井英和)や三角眼(麿赤兒)といったヤクザたちが、2人の逃避行の行く手を容赦なく塞いでいく。
肉の卸屋の犀(新井浩文)や、アパートの奇妙な住人・辻姫(沖山秀子)、売女(絵沢萠子)に娼婦(内田春菊)、あるいは街を彷徨う父巡礼(牧口元美)と母巡礼(上杉幸子)、出痔亀(秋山道男)、東京の出版社からやってくる山根(金子清文)らが入り乱れる、さらに謎めいた彫眉の孫・晋平(榎田貴斗)の存在。この猥雑な風景は、まさに現世の縮図そのものだ。

タイトルの「赤目四十八瀧」を目指し、降りしきる雪の中をどこまでも堕ちていく2人。それは悲劇でありながら、社会のシステムから完全にこぼれ落ちた者たちだけが味わえる、至高の解放の瞬間でもある。綺麗な言葉や洗練された恋愛に飽き飽きした心を、生身の肉体と血の匂いで激しく殴りつけてくるような、日本映画の底力を思い知らされるドロドロの傑作だ。

あらすじ

釜ヶ崎から尼崎へと移り住み、ホルモン串焼き店で黙々と働く青年・与一は、同じアパートに暮らす娼婦の綾と出会い、やがて男女の関係に。ある日、組のトラブルで多額の身売りを強いられた綾から手紙を受け取った与一は、尼崎を離れて彼女と合流し、大阪の街を彷徨った末に「この世の外へ連れて逃げて」という彼女の願いに応じて赤目四十八滝へ向かう。
自然深い滝の奥へと進む中、綾はかつて兄が行けなかった遠足の思い出を語り、「本当は心中するつもりだったけれど、もう十分」と与一に告げて心中を思いとどまるが、大阪へ戻る電車の旅の途中、奈良の駅で綾は「やっぱり博多へ行く」と言い残して突然一人で下車。足がもつれて追うことができない与一は、閉まるドアの向こうへ消えゆく彼女をただ見送るしかなかった。

キャスト

生島与一(尼崎に流れ着いた青年) – 大西滝次郎
綾(在日朝鮮人) – 寺島しのぶ
岸田勢子(与一の雇い主) – 大楠道代
彫眉(彫師) – 内田裕也
晋平(彫眉の孫) – 榎田貴斗
犀(肉の卸屋) – 新井浩文
真田(綾の兄) – 大楽源太
業(真田の舎弟) – 大森南朋
爺公(同) – 森下能幸
辻姫(与一と同じアパートの住人) – 沖山秀子
売女 – 絵沢萠子
娼婦 – 内田春菊
父巡礼と母巡礼 – 父巡礼(牧口元美)、母巡礼(上杉幸子)
出痔亀 – 秋山道男
山根(東京の出版社勤務) – 金子清文
三角眼(ベテランヤクザ) – 麿赤兒
新世界(真田とは別の組のヤクザ) – 赤井英和

寺島しのぶは好きになれないなあ。

そう、やっぱり長すぎるのだろうな。159分はちょっとね。荒戸源次郎だから、やっぱり長い映画を作ってしまうのか。徹底的に頭で書いたとしか思えない車屋の原作では、後半にもう少しドライブ感があったような気がするのだが、映画にはそれがない。

下妻物語」にも出てくる異世界アマは、あの大脱線事故があったところだ。この映画ではまるでアメリカ南部のように完全に隔絶した異世界になっている。異世界が異世界たるゆえんは、食いものと女と臭い、わからない言葉。

筒井康隆の名作「新日本探偵社報告書控」をこういう感じで映画化してもらいたい。なぜ誰もしないのか。

『赤目四十八瀧心中未遂』を観るには?

『赤目四十八瀧心中未遂』作品情報

監督 – 荒戸源次郎
脚本 – 鈴木棟也
原作 – 車谷長吉
音楽 – 千野秀一
撮影 – 笠松則通
編集 – 奥原好幸
配給 – 赤目製作所
公開 – 2003年10月25日
上映時間 – 159分

『赤目四十八瀧心中未遂』の原作(車屋長吉)

文壇を騒然とさせた第119回直木賞受賞作。
アパートの一室で、「私」は来る日も来る日も、モツを串に刺し続けた。尼ヶ崎のはずれにある、吹き溜まりの町。向いの部屋に住む女「アヤちゃん」の背中一面には、迦陵頻伽の刺青があった。ある日、女は私の部屋の戸を開けた。「うちを連れて逃げてッ」―ー。二人の逃避行が始まる。
救いのない人間の業と情念。圧倒的な小説作りの巧みさと見事な文章で、底辺に住む人々の姿を描き切った傑作。異色の私小説作家・車谷長吉の代表作。

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