激流の感想
舞台はアイダホ州のサーモンリバー、これは「帰らざる河」の舞台なのではないだろうか(ロバート・ミッチャムとモンローが筏で下った川だ)。もっとも、ロケ地はモンタナ州クートネー川などアメリカ南西部らしい。
ストーリーは単純で、家族恒例の川下り休暇に牛の競売金を強奪した逃亡犯2人が乱入し、ともに川を下り続けることになるというもの。逃亡犯のリーダーがいかにも悪そうなケヴィン・ベーコン、家族を率いるカヌーの名手がメリル・ストリープ(当時45歳だが、スタントなしというのが凄い)で、建築家のワーカホリックの夫、小学生の息子、それと犬という構成。元リバーガイドのストリープが十代のときに挑んで仲間は死んだという急流の難所「ガントレット」を呉越同舟の4人(犬と夫は途中で脱落)は制覇できるか?
逃亡犯たちがわざわざ川下りで逃げているのは警察の裏をかくためで、車が待つ地点まで舟で移動しようという作戦なのだが、途中で脱出した夫と犬は川から上がって先回りし、ガントレットに逆転のための罠を仕掛ける。それならベーコンも陸路で移動すればいいのに、という脚本はやや興醒め。そもそも罠はガントレットの前でないと意味ないのでは?
文字通りの激流に翻弄されながら転覆すれすれに滝壺を回避していくボートはどうやって撮影したものか。銃を突きつけられた状態から、ガントレットに近づくにつれて急に張り切り、立場逆転でベーコンたちをあごで使いながら激流を楽しむストリープの演技も見どころ。
激流の見どころ
大自然の猛威と、凶悪犯に立ち向かう母親の強さが融合した、手に汗握るサスペンス映画。
- メリル・ストリープの「アクション女優」としての新境地
オスカー女優メリル・ストリープが本格的なアクションに挑戦。彼女が演じる主人公ゲイルはかつてリバーガイドとして働いていた経験を持つ芯の強い母親。家族を守るために、自ら激流のラフティングボートを操り、凶悪犯に立ち向かう。撮影に際して、ストリープは実際にラフティングの訓練を積んだ。鍛え上げられた体と迫力あるボート捌きは必見。知的な役柄とは異なる、たくましく行動的なメリル・ストリープの姿が人を驚かせた。 - ケヴィン・ベーコンの不気味な悪役
ゲイルたち一家を人質にとる凶悪犯ウェイドを演じるのはケヴィン・ベーコン。一見気さくで親しみやすい男を装いながら、裏では冷酷で残忍な本性を隠し持つウェイドを怪演。不気味な存在感と、何を考えているか分からないサイコパス的な言動が緊張感をもたらす。 - 大自然の猛威とスリリングなラフティングシーン
舞台は雄大な自然に囲まれた激流の川。「ガントレット」と呼ばれる生存率が極めて低い難所を下っていくシーンは、CGをほとんど使わずに撮影されている。実際にボートが転覆しそうになるなど、命がけで撮影されたと言われるシーンの連続。大自然の美しさと、それが牙を剥く瞬間の恐ろしさが対比的に描かれた。 - 家族の絆と再生の物語
ゲイルと夫トム(デヴィッド・ストラザーン)は、離婚を考えている夫婦。家族旅行として来た川下りのはずが、凶悪犯との遭遇によって命の危険にさらされる。極限状況の中でバラバラになりかけていた家族が互いに協力し、支え合うことで、再び絆を深めていく。弱いと思われていた夫が家族を守るために立ち向かう姿など、人間の内なる強さが描かれた人間ドラマでもある。 - ジョン・C・ライリーやジョゼフ・マゼロなどの好演
ウェイドの仲間として、少し気の弱いテリーを演じるジョン・C・ライリー、ゲイルの息子ロークを演じるジョゼフ・マゼロ(後に『ジュラシック・パーク』のティム役で有名に)など、脇を固める俳優陣も個性的。
激流のあらすじ
川下りにやってきたゲイルと夫トム、息子ローク、愛犬マギーの一行は、ガイドに逃げられて立ち往生しているウェイドとテリーに乞われ、2艘で行動することになる。実は二人は逃亡中の強盗犯だったことを知り、ゲイルとトムは2人を置き去りにしようとするが見つかって失敗。ウェイドは銃で一家を脅し、ボートをゲイルに漕がせ、車を用意したガントレット(3本の川の合流点で、大きな滝壺があり、通行が禁止されている最高クラスの難所)の先まで行くことを要求する。
トムは隙を見て山側へと逃亡を図り、山の頂上から狼煙を上げて無事であることをゲイルとロークに伝えたが、トムは山側からガントレットに先回りし、朽ちた給水塔と錆びたクレーンを発見するが……。
激流を観るには?
激流のキャスト
ウェイド – ケヴィン・ベーコン
トム・ハートマン – デヴィッド・ストラザーン
ローク・ハートマン – ジョゼフ・マゼロ
テリー – ジョン・C・ライリー
ウィラ・ハートマン – ステファニー・ソーヤー
森林監視員 ジョニー – ベンジャミン・ブラット
フランク – ウィリアム・ラッキング
ゲイルの母 – エリザベス・ホフマン
ゲイルの父 – ヴィクター・ギャロウェイ
レンジャー – ダイアン・デラーノ
レンジャー – トーマス・F・ダフィ
警官 – グレン・モーシャワー
バイオリニスト – ポール・カンテロン
激流のスタッフ
脚本 – デニス・オニール
製作 – デイヴィッド・フォスター、ローレンス・ターマン
製作総指揮 – レイモンド・ハートウィック、イロナ・ハーツバーグ
音楽 – ジェリー・ゴールドスミス
撮影 – ロバート・エルスウィット
編集 – デヴィッド・ブレナー、ジョー・ハッシング
公開 – アメリカ 1994年9月20日 日本 1995年4月22日
上映時間 – 112分