クロッシング

カタルシスのなさが沁みる（クロッシングの感想）

邦題は、退職間際のリチャード・ギア、子沢山で金が欲しいイーサン・ホーク、潜入捜査中で壊れかかっているドン・チードルというNY市警の3人の運命が交錯することを予告しているのだが、実際には関わっている事件も異なり、3人は最後まで交わることがない。むしろ微妙なすれ違いの群像劇として楽しむべき映画だろう。

リチャード・ギアは朝起きるとまず酒を注ぐのが日課だし、イーサン・ホークは大家からの鬼電に追われているし、ドン・チードルは自分の都合しか考えてない鬼FBI捜査官（エレン・バーキンがすごくイヤな感じを出している）に追い込まれるし、3人とも行き止まりの鬱状況にある。

退職の日を迎えたリチャード・ギアは、意を決して馴染みの娼婦（シャノン・ケイン）に一緒に街を出ないかと聞くが、返事は「……」で、とにかくかっこ悪いこと夥しく、このカタルシスのなさが身に沁みる映画なのだった。

悪くない。

クロッシング　見どころ

ニューヨークのブルックリンにある犯罪多発地区を舞台に、それぞれ異なる状況と苦悩を抱える3人の警察官の運命が、ある事件をきっかけに交錯していく群像劇。

1. 3人の警察官の運悩と「正義」の問いかけ
   リチャード・ギア、イーサン・ホーク、ドン・チードルという実力派俳優が演じる、それぞれ異なる立場と倫理観を持つ3人の警察官の葛藤。
   • エディ（リチャード・ギア）: 定年退職を1週間後に控えたベテラン警官。人生に希望を見出せず、惰性で日々を過ごしているが、新人警官との警ら中に事件に遭遇し、自身の「正義」と向き合うことになる。疲弊しきったベテラン警官を渋く演じる
   • サル（イーサン・ホーク）: 病気の妻と多くの子供を抱え、新居購入のために必死に資金を工面しようとする麻薬捜査官。安月給に苦しみ、家族を守るために麻薬売買絡みの大金を強奪しようと道を踏み外していく。家族への愛と、それゆえの選択に苦悩する姿
   • タンゴ（ドン・チードル）: 長年ギャング組織に潜入捜査官として入り込んでいる刑事。潜入先のギャングとの間に奇妙な友情が芽生え、自らの職務と、友情との板挟みで苦悩する。二重生活の緊張感と、裏切りへの葛藤
2. アントワーン・フークア監督のリアルな描写
   『トレーニング デイ』で警察官たちの人間ドラマを描き、デンゼル・ワシントンにアカデミー賞主演男優賞をもたらしたアントワーン・フークア監督が、ニューヨークの犯罪多発地区を舞台に、リアルで gritty（ざらついた、生々しい）な世界観を構築。緊張感と警察の日常に潜む闇が見どころ。
3. 息詰まるサスペンスと群像劇
   ある警官による黒人青年射殺事件をきっかけに、3人の運命が複雑に交錯する。それぞれが抱える問題と直面する状況が、やがて一つに収束していくサスペンス。
4. 「救われない」結末のリアリティ
   本作は勧善懲悪やハッピーエンドとは一線を画す。それぞれの警察官が、それぞれの「正義」や「欲求」のために行動した結果、必ずしも救われるとは限らない、重苦しい現実が描かれる。

トリビア・撮影裏話など

製作費2500万ドルに対し、全世界で約3600万ドルの興行収入を記録。大ヒットとは言えないものの、批評家からはその重厚なテーマと俳優たちの演技が高く評価されているL2

クロッシングの人物相関図

クロッシング あらすじ

ブルックリンの犯罪多発地区で警官による強盗事件が発生、ニューヨーク市警は取締り強化に乗り出す。そんな中、定年退職を1週間後に控えたベテラン警官エディは最後の仕事として新人教育を任される。一方、薄給で家族の生計に苦しむ麻薬捜査官サルは、捜査中に大金を目の当たりにする。また、長年の潜入捜査から身を引きたいタンゴは、ある過酷な任務を課せられてしまう。そんな彼らの哀しき運命が互いに交わっていくのだが…。

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クロッシングのキャスト

エドワード・エディ・デューガン – リチャード・ギア
サルヴァトーレ・サル・プロシダ – イーサン・ホーク
クラレンス・タンゴ・バトラー – ドン・チードル
キャズ – ウェズリー・スナイプス
ビル・ホバーツ – ウィル・パットン
スミス – エレン・バーキン
カーロ – ヴィンセント・ドノフリオ
メルヴィン・パントン – ローガン・マーシャル＝グリーン
レッド – マイケル・ケネス・ウィリアムズ
エディ・クインラン – ジェシー・ウィリアムズ

クロッシングのスタッフ

監督：アントワーン・フークア
脚本：マイケル・C・マーティン
撮影：パトリック・ムルギア
編集：バーバラ・タリヴァー
美術：テレーズ・デプレス
音楽：マーセロ・ザーヴォス
衣装：ジュリエット・ポルクサ