1960年の映画映画1960年代の映画

夜の流れ

司葉子(夜の流れ) 1960年の映画
司葉子(夜の流れ)
『夜の流れ』は、1960年公開の成瀬巳喜男・川島雄三共同監督による日本映画。脚本は成瀬のオリジナル。「浮雲」の成瀬巳喜男が「幕末太陽傳」の川島雄三とタッグを組んで共同監督した。プロデューサーの金子正且の回想によれば、藤本真澄が成瀬を慕っていた川島に共同監督を発案したという。撮影は「娘・妻・母」と「秋立ちぬ」の間で行われ、二人は、セットでの撮影は成瀬、ロケでの撮影は川島と分担し、撮影・美術・照明も各々に二人ずつ用意し、ロケとセットで役者がかぶらないように気を付けながら急いで撮り、編集とダビングは二人が立ち会ったという。

『夜の流れ』ってどんな映画?

東宝の創立30周年記念映画として製作された本作は、成瀬巳喜男川島雄三の共同監督という贅沢な試みがなされた名作。新橋の高級料亭「藤村」を舞台に、そこで生きる女たちの意地と、彼女たちを囲む男たちの欲望が、一分の隙もないモダンな映像美の中に描き出されている。

物語の軸となるのは、料亭を切り盛りする女将の綾(山田五十鈴)と、その娘である美也子(司葉子)の、似た者同士ゆえに衝突する複雑な親子関係だ。山田五十鈴が体現する、酸いも甘いも噛み分けた老舗の女将としての圧倒的な貫禄と、ふとした瞬間に覗かせる一人の女としての孤独。そして、そんな母親に反発しながらも、自らもまた男たちの思惑の渦へ巻き込まれていく司葉子の凛とした美しさが対照的。

この映画の愉しみは新橋の夜を彩る芸者や女中たち、東宝オールスターとも言える豪華すぎる女優陣の競演。草笛光子星由里子、若き日の市原悦子らが、パッと見は華やかでありながら、裏ではしたたかに、時に泥臭くマウントを取り合う女社会のリアルを、テンポの良い会話劇で活き活きと魅せてくれる。さらに、越路吹雪志村喬宝田明といった名優たちが脇を固め、高度経済成長期の熱気と、その陰にある人間模様に圧倒的な厚みを与えている。

成瀬の「日常の細やかな心理描写」、川島の「都会的でモダン、かつ辛辣な人間風刺」が融合し、料亭の畳の上で繰り広げられる大人たちの騙し合いや嫉妬が、少しも古びないシャープさで描かれる。

新橋の路地裏、三味線の音と車のクラクションが混ざり合う夜の帳の中で、女たちは誰を愛し、何を切り捨てて生きていくのか。昭和の日本映画が持っていた底知れないパワーと、洗練された大人のエスプリを心ゆくまで堪能できる群像劇だ。

あらすじ

料亭「藤むら」の雇われ女将綾(山田五十鈴)は苦労して一人娘の美也子(司葉子)を大学にまで進ませた。「藤むら」のパトロン園田浩一郎(志村喬)は綾に言い寄っているが、綾は靡かない。美也子と園田の娘忍(白川由美)は大学の友人同士だった。美也子と忍は「藤むら」に出入りする芸妓たちとも親しかった。美也子は板前の五十嵐(三橋達也)にひそかに思いを寄せていたが、五十嵐は綾と関係を持っており、五十嵐はそのことで悩んでいた。芸妓の一花(草笛光子)は有能な呉服屋滝口(宝田明)と新生活を始めようとしていたが、別居中の夫野崎(北村和夫)につきまとわれていた。ひょんなことから、母綾と五十嵐の関係を知った美也子は衝撃を受け、五十嵐は綾との関係を断とうとするが、綾が逆上する。これがきっかけとなって綾は園田から切られることになる。夫と縁を切って滝口と暮らし始める一花にも悲劇が訪れ、美也子は母との生活のために芸妓になる決意をするが、母綾は自分のもとを去った五十嵐を追って一人で出ていく。

キャスト

藤村美也子 – 司葉子
藤村綾 – 山田五十鈴
滝口速太 – 宝田明
五十嵐力 – 三橋達也
園田忍 – 白川由美
金太郎 – 水谷良重
一花 – 草笛光子
あけみ – 星由里子
万里 – 横山道代
紅子 – 市原悦子
小町 – 北川町子
川津志満 – 三益愛子
村上弥生 – 越路吹雪
園田浩一郎 – 志村喬
野崎 – 北村和夫
英語教師 – 岡田真澄
園田の秘書 – 中丸忠雄
忍の叔母 – 長岡輝子

手厳しいメッセージは成瀬のものか。

封切に間に合わぬために川島雄三に声がかかり、ちょうど半分を別のスタッフを組んで撮ったという。ダブルシステムというのだね。山田五十鈴中心のシーンを成瀬司葉子中心のシーンを川島が撮ったらしいが、詳細は議論百出らしい。

山田五十鈴は料亭「藤むら」の雇われ女将、その一人娘が司葉子である。店へ出入りする芸妓たちに白川由美水谷良重草笛光子市原悦子三益愛子と豪華キャストで、自殺未遂を繰り返したり(市川)、不良にレイプされたり(水谷)、離婚した夫に無理心中の道連れにされたり(草笛)と、笑えないエピソードが描かれる。無理心中のくだりは南武線尻手駅のホームで、チョコレート色の車両には見覚えが。ジャズバーで芸妓たちが騒ぐシーンなども面白い。

山田は戦争帰りの板前・三橋美智也とデキているのだが、娘もまた三橋に恋心を抱いている。入院した三橋を見舞った司葉子は彼が母と抱き合っているのを見てしまう。三橋は店を辞めると言い出し、山田は逆上して包丁をもって追いかける。この「女の演技」がコワイ。二人の間柄は知れ渡ることとなり、山田も店を追われることに。(新しい女将として越路吹雪が来る)

司葉子が部屋を訪れると、三橋は旅支度をしていて、シベリアで死にかかった(凍傷になった脚を小刀で切開手術したという)自分は一度死んだも同然で、誰とも生きてゆくつもりはないというようなことを言う。司陽子はかっとなり、もう戦争の傷跡なんか何の役にも立たない、ひとりで悲劇のヒーローぶってるあんたのような男が、女をひどく傷つけるんだと三橋を罵る。この手厳しいメッセージは成瀬のものだろうか。

店を追われた母を助けるために芸者になることを決めた司葉子。だが、そのお披露目を見送った山田は別れの手紙を残し、神戸に流れていった三橋を追って家をそっと出て行く。ラストは晴れやかな司葉子と、思いつめた顔で道を急ぐ山田五十鈴のカットバック。

『夜の流れ』を観るには?

『夜の流れ』作品情報

監督 – 成瀬巳喜男、川島雄三
脚本 – 井手俊郎、松山善三
製作 – 藤本真澄
出演者 – 司葉子
山田五十鈴
音楽 – 斎藤一郎
撮影 – 安本淳、飯村正
編集 – 大井英史
配給 – 東宝
公開 – 1960年7月12日
上映時間 – 111分

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