バンクジョブ

ややこしい実話をまとめた午後ローならではの秀作（バンクジョブの感想）

稼業から足を洗った小悪党たちが、ひと癖ある女（サフロン・バロウズ）にたぶらかされ、トンネルを掘って銀行の貸金庫室を襲うが、そこには黒人活動家が保身のために入手したマーガレット王女の良からぬ写真、売春宿の経営者が隠し撮りしたSMごっこに興じる政治家の写真、悪徳警官への賄賂帳などが預けられていたので、警察に追われながらも、王室を守るMI6や政治家、売春宿の用心棒（？）や悪徳警官などを敵に回すことになり、絶体絶命に陥るという話。
ややこしい話（実話だそうだが）なのにうまくまとめていて、午後ローならではの面白さだった。

主役はジェイソン・ステイサムで、切れ者ふうに描かれているが、単なる潰れかけの中古車屋に過ぎず、明らかに小物の設定なので、主役であること自体にギャップがある。
悪事の臭いに勘づきながらも「どのくらい危ないの？」ぐらいしか言わない妻は、夫が銀行強盗犯と知っても、それより夫が浮気したことの方が許せないという性格で、ラストのさげは、サフロン（「ディープ・ブルー」の女優である）とその妻の対決になる（一番の強敵は妻）、というのがなかなか洒落ている。

バンクジョブのあらすじ

テリーは妻子のために足を洗ったが、高利貸しの嫌がらせに苦しむ中、旧知のマルティーヌから銀行地下貸金庫強盗の話を持ちかけられる。1971年、テリーらはトンネルを掘り、貸金庫から現金やスキャンダラスな写真を強奪。写真にはマーガレット王女のセックス写真も含まれていた。政府や汚職警官、ポルノ業者が写真の回収に動き、実行犯は追われる。テリーは王女の写真をマウントバッテン卿に渡し、不逮捕の保証を得る。仲間は殺害され、テリーは逮捕されるが釈放。政府はマイケルＸを逮捕し、写真を回収。事件は「D通告」で報道されず、多くの被害者が申告を拒否した。

バンクジョブを観るには？

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バンクジョブがモデルにした「ベイカーストリート強盗事件」とは

1971年9月11日夜、ロンドンのロイズ銀行ベーカー街支店で発生した貸金庫の強盗事件。
一味は2軒隣の貸店舗から12メートルのトンネルを掘って金庫室に侵入し、268個の貸金庫を空にした。主犯のアンソニー・ギャビンはドイルの『赤毛連盟』に着想を得たとされる（『赤毛連盟』にはホームズが銀行の金庫室の床から侵入する盗賊を待ち伏せる描写がある）。
ギャビンたちは、銀行から2軒隣の革製品店店舗を借り、週末にトンネルを掘った。メンバーの1人が傘と腕の長さを使って設備の寸法と位置を測り、金庫までの地図を作成した。当初はジャッキで金庫室の床に穴を開けようとしたが失敗し、ランス切断を試みるもそれも失敗し、最終的にはゼリグナイトの爆薬で穴を開けた。
一味は近くの屋上に見張りを置いてトランシーバーで連絡を取っており、その会話をアマチュア無線家が偶然受信して警察に通報したが、当初は相手にされなかった。再度警察に通報してようやく一味の侵入中に捜査が開始されたが、付近の半径8マイル（約13km）には銀行が750もあり、一味の行方はつかめなかった。
メンバーの一人ベンジャミン・ウルフは革製品店舗を本名で賃貸契約していたため、そこから一味の4人が逮捕された。しかし他のメンバーは5年間探し続けても発見できなかった。60代だったウルフを除き、逮捕された3人は12年の懲役刑を言い渡された（ウルフは8年）。
「政府が報道を検閲するためにD通告を出した」「貸金庫にマーガレット王女と俳優で犯罪者のジョン・ビンドンの良からぬ写真があった」「保守党の閣僚が子供を虐待している写真が見つかった」などの噂が生まれ、『バンク・ジョブ』にも盛り込まれている。
被害総額は125万～300万ポンドと言われるが、警察はそのうち23万1000ポンドしか回収できなかったという。
この強盗事件に関する文書は2071年1月まで非公開とされている。

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