『サブスタンス』ってどんな映画?
交換の期限は、わずか一週間――
コラリー・ファルジャ脚本・監督による、再生医療を題材にしたボディホラー映画。50歳で長寿エアロビクス番組を降ろされた元スター、エリザベス・スパークル(デミ・ムーア)は、若く美しい分身スー(マーガレット・クアリー)を生み出す「サブスタンス」に望みを託す。二人は一週間ごとに意識を切り替える決まりだが、スーはテレビ界で瞬く間に脚光を浴びていく。年齢で価値を測る業界の視線、鏡や身体を見つめる場面、薬のルールが生む焦りを、過激な肉体変化と鮮やかな色彩で映し出す。
あらすじ
かつてハリウッドで成功を収め、現在はテレビのエアロビクス番組で長年レギュラーを務める元人気スター、エリザベス・スパークル(デミ・ムーア)は、50歳の誕生日に番組プロデューサー、ハーヴェイ(デニス・クエイド)から、年齢を理由に降板を告げられる。
失意のまま交通事故に遭い病院へ運ばれたエリザベスは、男性看護師から「サブスタンス」と名付けられた謎の再生医療を示すUSBメモリを渡される。それは、より若く、より美しく、より完璧な自分を手に入れられるというものだった。ためらいながらも指定先で薬剤を受け取った彼女は、自らに注射を打つと、背中からエリザベスの記憶と資質を持ち、若い肉体を備えたスー(マーガレット・クアリー)が生まれる。
スーはハーヴェイの目に留まり、エリザベスが失ったテレビの世界へ入り込んでいくが、肉体を維持するには一週間ごとに意識を切り替え、定められた手順を守らなければならない。再び注目を浴びるスーと、部屋に閉じこもりがちになるエリザベス。若さと名声を得るための選択は、二人の関係と薬のルールを少しずつ揺るがしていく。
キャスト
エリザベス・スパークル / モンストロ・エリザスー - デミ・ムーア
スー - マーガレット・クアリー
ハーヴェイ - デニス・クエイド
フレッド - エドワード・ハミルトン=クラーク
オリバー - ゴア・エイブラムス
トロイ - オスカー・ルサージュ
ダイナーの男 - クリスチャン・エリクソン
男性看護師 - ロビン・グリア
医師 - トム・モートン
ディエゴ - ウーゴ・ディエゴ・ガルシア
サブスタンス(声) - ヤン・ビーン
見どころ
一週間ごとの交代が分身との共同生活を縛る
エリザベスと若い分身スーは、同じ存在として一週間単位で意識を交代させる。どちらか一方だけが表舞台に立てる時間制限と、肉体を維持するための手順が、単なる若返りの願望を切迫した駆け引きへ変えていく。
年齢で切り捨てられた元スターが挑むテレビ業界
50歳の誕生日にエアロビクス番組を降板させられたエリザベスと、彼女と入れ替わりテレビ界で注目を浴びるスー。番組プロデューサーの露骨な言動や番組のきらびやかな演出を通じて、若さと見た目を商品にするショービジネスの価値観が描かれる。
背中から現れる分身を起点にした強烈な肉体表現
薬剤の注射をきっかけに、エリザベスの背中からスーが現れる場面から、身体そのものが物語を動かす。鏡に映る顔や肌、薬品の扱い、人工的で派手な室内空間を細部まで見せ、再生医療の魅力と不穏さを視覚的に積み重ねる。
複数の映画賞に選出
第77回カンヌ国際映画祭でファルジャが脚本賞、第82回ゴールデングローブ賞でデミ・ムーアが主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)、第97回アカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞している。
感想
よく映画のタイトルを検索すると「気まずい」という候補が表示されて、人はどんだけ気まずい映画を避けているのかと思っていたのだけれど、本作ほど気まずい映画はないだろう。
誰もが長すぎると思うであろうクライマックスは、逃げ出したくなる怖さを越えて、ほとんど爆発的なギャグであった(身体の中から何百リットルの血を出しているのか?)。A24作品かと思ったら、違うのである。
(言わずもがなだが)ルッキズムとか、女性の肉体を舐めるように鑑賞する男たちの視線の気持ち悪さとか、食欲と性欲のオーバーラップといったテーマは見てとれるものの、そうしたこともすべて陳腐にしてしまう圧倒的パワーがある。
映画にはボディホラーというジャンルがあり(うっかり観ないようにするために、「ハリウッドリポーター記事『ボディホラー映画10選』」という記事が役に立ちそうだ)、シェリー夫人の「フランケンシュタイン」を源流として、「身体に対するグロテスクな、あるいは心理的に不安を喚起するような加害描写を意図的に描いている」映画である。代表はおなじみクローネンバーグで、初期の塚本晋也(『鉄男』)や1958年の『ハエ男の恐怖』などもこの流れにある。さらに近年では女性の身体性を批評する概念となりつつあり、それをエンパワーしているのがA24作品と私は解釈している(本作監督のコラリー・ファルジャも女性)。
また本作のグロさは、美容医療に根強く関係するイメージを喚起させる。「ダウンタイム」のオープニングイメージにひやりとするのも、同じイメージではないだろうか。
『サブスタンス』を観るには?
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『サブスタンス』作品情報
監督 – コラリー・ファルジャ
脚本 – コラリー・ファルジャ
製作 – コラリー・ファルジャ、ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー
製作総指揮 – アレクサンドラ・ロウイ
音楽 – ラファティ
編集 – コラリー・ファルジャ、バランタン・フェロン
製作会社 – ワーキング・タイトル・フィルムズ、Blacksmith
配給 – イギリス・アメリカ:Mubi、フランス:Metropolitan Filmexport、日本:ギャガ
公開 – イギリス・アメリカ:2024年9月20日、フランス:2024年11月6日、日本:2025年5月16日
上映時間 – 142分



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