『半落ち』ってどんな映画?
横山秀夫の同名ミステリを原作に、日本の警察・検察・司法・報道という組織の思惑や、人間の尊厳、家族の愛のあり方をテーマに据えた社会派人間ドラマ。
硬質なミステリーに人情味を融合させた監督・脚本は『陽はまた昇る』など実直な人々を温かく描く佐々部清。
主演の寺尾聰は、妻殺しの罪を背負う元警部を抑えた静かな芝居。刑事役の柴田恭兵も組織の狭間で葛藤する男を実直に演じている。ただし後半の西田敏行などの熱演はお涙頂戴が過ぎる情緒過多のように思える。
「空白の2日間」の謎を軸に組織の欺瞞を暴く本作は、政治劇よりも個人の内面に焦点を当てている。介護や病といった重い現実が続き、派手な爽快感を求める人には向かないだろう、不条理な運命に直面した人間の強い意思に涙したい人におすすめしたい。
あらすじ
警察幹部の殺害事件と「空白の2日間」の真相
現役警部の梶聡一郎がアルツハイマー妻・啓子を殺害し自首。捜査一課の志木和正の取り調べで犯行を認め、「空白の2日間」に沈黙。梶は7年前に亡くなった息子の骨髄を提供し、少年の命を救っていた。啓子は認知症が進行する前に少年と会いたいと望んでいた。妻を殺害後、梶は日記でその望みを知り、少年に会いに行き、生きる決意をした。4年の実刑判決を受け、志木は少年・池上との面会を手配。池上は梶に「生きて下さい」と伝えた。
キャスト
志木和正(県警捜査第一課強行犯係指導官・警視):柴田恭兵
佐瀬銛男(地検検事):伊原剛志
梶啓子(聡一郎の妻):原田美枝子
島村康子(啓子の姉):樹木希林
中尾洋子(新聞記者):鶴田真由
藤林圭吾(裁判官特例判事補):吉岡秀隆
藤林澄子(藤林の妻):奥貫薫
藤林圭一(元裁判官で藤林の父):井川比佐志
辻内(裁判長):本田博太郎
片桐時彦(洋子の上司):田辺誠一
植村学(弁護士):國村隼
植村亜紀子(学の妻):高島礼子
高木ひさ江(啓子の主治医):奈良岡朋子
笹岡(県警警務部長):斎藤洋介
鈴木孝夫(地検検察事務官):田山涼成
岩村肇(県警刑事部長):石橋蓮司
加賀美康博(県警本部長):嶋田久作
古賀誠司(刑務官):笹野高史
小国鼎(地検検事正):西田敏行
その他
高野しず子:岩本多代
伊予数男:中村育二
池上一志:高橋一生
梶俊哉(梶夫妻の息子):石田法嗣
感想
林真理子の株を散々に落とした横山秀夫の原作(2003年第128回直木賞の最終選考において、「致命的欠点が存在」と指摘し、議論を巻き起こした)を私は読んでいない。
しかし、警察・検察・報道・裁判所という“四つ巴”を描いているのは面白いが、やはり同じ高崎を舞台にした「64」のほうが素晴らしい。
原作は出頭した男の心情を一切描いていないそうだが、映画では寺尾聡が無言のまま目一杯演技していて余韻がなかった。
原作では男性の新聞記者を鶴田真由に演じさせることで、危うさを画面にもたらしていた。鶴田真由自体、久しぶりに見たんだけど。
そしてラスト近くに若い高橋一生が出ていて、思わずのけぞった。
半落ちを観るには?
半落ち 作品情報
脚本 – 田部俊行、佐々部清
音楽 – 寺嶋民哉
撮影 – 長沼六男
美術 – 山崎秀満
照明 – 吉角荘介
録音 – 高野泰雄
編集 – 大畑英亮
助監督 – 高橋浩
製作担当 – 林周治
スクリプター – 江口由紀子
音響効果 – 佐々木英世(東洋音響)
現像 – 東映ラボ・テック
ロケ協力 – 高崎市、高崎フィルム・コミッション、富岡市、水上町 ほか
企画 – 坂上順、近藤邦勝
企画協力 – 近藤晋
プロデューサー – 中曽根千治、小島吉弘、菊地淳夫、濱名一哉、長坂勉
協力 – 骨髄移植推進財団
製作プロダクション – 東映東京撮影所
製作 – 「半落ち」製作委員会(東映、TBS、住友商事、東京都ASA連合)
配給 – 東映
公開 – 日本 2004年1月10日
上映時間 – 121分
半落ちの原作(横山秀夫)
日本中が震えたベストセラー待望の文庫化
妻を殺し、それでも生きる。心の奥に想いを秘めて――
「妻を殺しました」。現職警察官・梶聡一郎が、アルツハイマーを患う妻を殺害し自首してきた。動機も経過も素直に明かす梶だが、殺害から自首までの2日間の行動だけは頑として語ろうとしない。梶が完全に“落ち”ないのはなぜなのか、その胸に秘めている想いとは――。日本中が震えた、ベストセラー作家の代表作。2003年このミステリーがすごい! 2002年週刊文春ミステリーベスト10 第1位。(講談社文庫)
【2003年第128回直木賞落選、2003年週刊文春ミステリーベスト10第1位】




