2021年のドラマドラマ2020年代のドラマ

おもひでぽろぽろ(ドラマ版)

4.0
稲垣来泉(おもひでぽろぽろ) 2021年のドラマ
稲垣来泉(おもひでぽろぽろ)
おもひでぽろぽろ(ドラマ版)は、NHK BSプレミアムおよびNHK BS4Kで「スペシャルドラマ」として2021年1月9日の21時-22時29分に放送。

おもひでぽろぽろってどんなドラマ?

1966年(昭和41年)と2020年(令和2年)の東京を舞台に、2人のタエ子とそれぞれの家族が織りなす物語を描いたホームドラマ。舞台を2020年に変更した上で、主演の松坂慶子の共演により、64歳となったタエ子を松坂が、その30代の娘・夏希を杏が演じる。

あらすじ

杉本タエ子(松坂慶子)のもとに娘の夏希(杏)と孫のみずき(横溝菜帆)が越してくる。タエ子はみずきにかつての自分を重ねる――父(高橋克実)が買ってきたパイナップルの苦い味、テストの悲惨な点数、学芸会で目ざめた女優魂――そしてタエ子は、あきらめていた夢を再び追う。「私、舞台に立ちます」オーディションを受け稽古に打ち込むタエ子。だがそのやさき、公演を予定していた劇場が倒産してしまう。

見どころ

「64歳のタエ子」という大胆な設定

おもひでぽろぽろジブリ版のヒロインは27歳のタエ子だが、本作では2020年の東京に生きる64歳のタエ子が主人公。
夫に先立たれた娘(杏)と孫娘との同居を機に、かつて諦めた「女優」という夢にもう一度挑戦しようとする姿が描かれる。「いくつになっても乙女」な部分を持ち続けるタエ子を、松坂慶子が圧倒的なコケットリと包容力で演じる。シニア劇団で奮闘する姿が同世代へのエールとなっている。

昭和と令和が交差する「記憶の魔法」

おもひでぽろぽろ「小学5年生の記憶」が現代のタエ子の日常に蘇る。
昭和40年代の風景(パイナップルを初めて食べる時の高揚感や、算数の点数に絶望するあの感覚)が、稲垣来泉が演じる子役時代のタエ子によって鮮やかに再現される。
現代の孫娘にかつての自分を重ね合わせることで、過去の自分を肯定し、今の自分を愛せるようになっていく過程がエモーショナルに描かれる。

母娘三代」のリアルな関係性

おもひでぽろぽろノスタルジー描写だけでなく、現代の家庭が抱える「微妙な距離感」も丁寧に描写されている。
真面目で現実的な娘・夏希と、どこか夢見がちな母・タエ子が、時に衝突しながら互いを「一人の女性」として認め合っていく姿が描かれる。さらに亡き夫を演じる浅野和之や、厳しかった昭和の父を演じる高橋克実などがドラマの厚みをプラス。

「一瞬一瞬を生きる」というメッセージ

おもひでぽろぽろ劇中でタエ子が孫に教える「舞台の上で生きるっていうことはね、一瞬一瞬を大事にすることなのよという言葉が本作のテーマである。過去を振り返りぽろぽろとこぼれ落ちる思い出を拾い集めることが、未来へ進む力になるというメッセージが込められている。

<ここに注目!>
コメディ的な軽やかさと、人間の心の深淵を覗くような鋭さを併せ持つ脚本を書いたのは矢島弘一。ジブリ版のプレッシャーを跳ねのけ、「令和の実写版」として見事に成立させた名作と言える。

感想

上記「見どころ」にも書いたように、ジブリ版のヒロインは27歳のタエ子で、舞台は82年の山形だったが、本作は2020年の東京(コロナ禍直撃中)で、67歳の松坂慶子が1966年の小学5年生の自分を回想しながら64歳のタエ子を演じる構成になっている。
つまりまったくの別物(言うなればジブリ版の40年後を描いた続編)で、2020年のタエ子はシンママの娘と孫と同居することになって、66年の自分の姿を孫娘に重ねるという構成である。
ただしパイナップルの話、初恋の話、お父さんに殴られた話、分数の割り算ができない話、あべ君の話などエピソードはほぼ一緒であり、あっと驚くアクロバティックな脚色といえよう。

プロットとしては内館牧子老境シリーズと同工異曲で、松坂慶子はシニア劇団のオーディションを受けて、小学生時代の夢だった女優の夢を叶えようとする。これが横溝菜帆(孫娘)の学芸会の話とシンクロする。

66年の風俗描写として「ひょっこりひょうたん島」の画面や、「バラが咲いた」やS&G、「こまっちゃうナ」などが流れるが、あまり深掘りされない。鶴田真由のお母さんはいつも割烹着だが、66年にはそういう母親はもう少なかったような気がする。

66年のタエ子を演じる稲垣来泉という子役がすばらしかった。

おもひでぽろぽろ(ドラマ版)を観るには?

おもひでぽろぽろ(ドラマ版)作品情報

キャスト

◼︎令和2年
杉本タエ子〈64〉 – 松坂慶子
杉本夏希(娘) –
杉本正伸(夫) – 浅野和之
杉本みずき(孫) – 横溝菜帆
村田マチ(パート仲間) – 濱田マリ
坂口(シニア劇団の演出家) – 山中崇
◼︎昭和41年
岡島タエ子 – 稲垣来泉
岡島建造(父) – 高橋克実
岡島芙美子(母) – 鶴田真由
岡島ナナ子(長姉) – 森迫永依
岡島ヤエ子(次姉) – 原菜乃華

スタッフ

原作 – 岡本螢刀根夕子『おもひでぽろぽろ』
脚本 – 矢島弘一
演出 – 渡辺一貴(NHKエンタープライズ)
撮影協力 – 青梅ロケーションサービス
プロデューサー – 緒方慶子
制作統括 – 柴田直之(NHK)、西村崇(NHKエンタープライズ)、大谷直哉(ザロック)
制作著作 – NHK、ザロック

おもひでぽろぽろの原作(岡本螢・刀根夕子)

『週刊明星』で連載(1987年)され、昭和41年(1966年)を舞台にした小学5年生の少女・タエ子の日常を描いたエッセイ風の物語。1話完結のオムニバス形式で、全21話(+特別編)で構成されている。
当時の流行、学校生活、家族とのやり取りなど、昭和の子供たちの等身大の生活が丁寧に描写されており、基本的には「小学5年生のタエ子」の視点で進むが、「大人になった現在のタエ子」が自身の過去を振り返る構成。
1998年に青林堂から全3巻(のちに全2巻)で刊行されたが、現在では徳間書店から「アニメージュ・コミックス」として全2巻で復刻されており、入手しやすくなっている。ジブリ版に比べると、「昭和の家族像や子供同士のシビアな関係性」がより細かく淡々と描かれている。

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