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名前をなくした女神

4.5
尾野真千子(名前をなくした女神) ドラマ
尾野真千子(名前をなくした女神)
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まず、ヒロインとして、尾野はすでに絶体絶命の受難状態である。
麿顔の夫・高橋一生はDVでセクハラで痴漢という、夫としては減点されまくりでマイナス点。その影響で幼稚園での尾野の立場は瓦解し、登園拒否に陥る。父親がハラスメントにまみれていることが公知になれば、お受験も失敗は必至。心の友の杏に一緒に考えようと言われて涙まで流したのに、裏切た上に、いっこうに「一緒に考え」ているような様子はない。
息子には「なんでお母さんの子供なんだ!」と言われてしまう始末だし(お庭でお弁当を広げるシーンは今回の白眉だった)、そう言われて死にたくなるほどの罪悪感がある、といった按配である。
救いは、杏憎しということで夫婦の意思が一致するところで、この皮肉な状態は次回もヒートアップするようだ。

尾野の不幸にくらべれば、杏の置かれた状況など、もはや霞んでしまう。
これまでの流れのほとんどは杏が尾野に憎まれるためのものであり、木村佳乃はもはや杏を憎んだりする余裕もない。
木村に関していえば、幼稚園前での倉科カナの策略で杏が窮地に陥るのを見て、「またこの子は…」というウンザリ感を出しているのが面白い。しかし遠足でのお弁当はやっぱり倉科と食べるのであり、倉科がくっついてくるせいもあるのだろうが、結局木村はこうした権謀術数(笑)が日常的だったような環境に慣れているのである。それこそたぶん女子高、女子大(山吹女子学院)という環境だろう。

幼稚園最大のスキャンダル|木村佳乃のフェロモン

あれほどメインを張っていた尾野真千子の出演時間が、激減してしまった。間違いなく前半のヒロインであった扱いを考えると、反動としても、いささか極端である。

今回は珍しく「1か月後」というテロップが出たのだが、これはつまり夏休みがあったということを意味する。
ママ友地獄も夏休みだったのであり、つまり顔を合わせなければ事件は何も起こらない。そして尾野はこの1か月の間、日がな一日ソファにへたりっぱなしだったわけだ。
相変わらず髪をほどいたままのプロフィールが美しいのだが、これでは、すでにうつ病を発症していると言える。
次の人事まで自宅で待機するように、と言われた麿顔の夫・高橋一生が、通勤を再開したがどうかはよくわからないが、相変わらずセクハラを否定していたので、まだ「次の人事」は発表になっておらず、したがって自宅待機の状態が続いているのだと考えられる。
「次の人事」とはいつなのか、10月か、それとも3月か。銀行って、役所じゃあるまいし、そんなに悠長なものだろうか。
次第に「いい人」感を漂わせるようになってきた高橋であるが、これでセクハラが寃罪だということになると、バスの中で女子高生の尻を触っていた事件の意味が不明になってしまう。
どうするつもりか。

今回のメインは木村佳乃の淡い恋であって、気の強い女王様キャラだった木村は実は優しい男に対する免疫がなく、ちょっと優しくされただけで簡単に荻原聖人になびいてしまった。
さすがに自制心はあり、萩原の手を握って「私は母親に戻ります」と言っていたが、萩原にちょっとでも遊び人マインドがあれば、触れなば落ちんという風情であった。
カイジの声優であり、雀鬼としても知られる萩原は、黒沢清の「CURE」で怖い殺人伝道師を演じていたのを忘れられないが、そのような男であればこそ、木村はどこまででも堕ちてしまっていただろう。
「警視庁継続捜査班」の頃からするとひどく痩せてしまった木村佳乃は、刑事・貴志真奈美とは比較にならないほどのフェロモンを出しまくっていた。
(冬ドラ「内部調査官・水平直の報告書」は、見そこねた)

一方、中島ひろ子が木村の夫・平山広行愛人ではないことが確定してしまった。
中島の後ろめたいような演技はミスリードだったが、これは中島が内心そう思われることを望んでいた確信犯だったということなのだろう。
倉科カナが演じる新藤真央は正真正銘の悪意の塊だが、中島も、ちょっとした悪女である。

さて、その倉科カナだが、木村佳乃に「あなたは無理をしすぎなのよ」と言われてブチ切れ、幼稚園全ママへの一斉メール爆撃という派手な報復に出た。杏のケータイ画面に映った送信元アドレスは、himawari@free_mailだった(棄てアドということだろう)。
たしか、倉科の家にはPCはなかったと思う。全ママのアドレスをケータイで宛先に打ち込むのはかなりの労力だったはずで、倉科の執念のほどが伺える。

一方、りょうは杏に正社員にならないかと誘っていた。ここでのトラブルがなかなか起こらないのでイライラするのだが、夫の不倫が発覚するのと同時になにか杏に災厄としてふりかかるのだろうか。

残り回数は少なく、もはや残された爆弾は、りょうの家庭だけである。

本当の敵が今、隣に|模擬面接は夫の査問会

イキナリ目付きが鋭くなったりょうのアップ、そこに重ねて今回のタイトル「本当の敵が今、隣に」を最後の最後に出すというニクイ演出。
予想通りのボスキャラではあるのだが、ここまで9週をかけて「私たちは仲良しドキドキ」という描写を重ねてきたので、ついにキタ!というカタルシスが心地良い。

りょうについては、「JOKER 許されざる捜査官」での瀕死のクローズアップカットについて、ミグルシイという失礼な感想を書いたことがあり、今でもそれを気にするのは、この人が漂わせる美人オーラ自体をくさすつもりはないからである。
ドラマはしょせん荒唐無稽と思うのは、たとえば登場人物のママたちが東郷チャイルドスクールの廊下に並んだとき、それがあきらかに一般人と一線を隠す異彩を放っていたりするからで、背が高い人たちだということもあるが、やっぱり女優はオーラが違うのである。
ま、当たり前すぎることなんだが。

りょうが演じる沢田利華子の特徴は、経済的に自立した女性ということである。小さいとはいえ、順調に業績をのばす会社の経営者として、社会的な判断をくだせる。これはつまりイヤガラセのレベルを超えて、自らの安全を確保した上で、完膚なきまでに相手を抹殺できる戦闘力があることを意味する。
まだフェロモンモードが残る木村佳乃は、ふたりの仲の良さを見ながら、それを揶揄するでもなく、「受験番号は他人に教えるものじゃない」と忠告していた。
さあ、りょうが受験番号を使って杏をどう陥れるのか、まったくもって今から楽しみである。視聴者がこのドラマでもっともドキドキする瞬間だ。

最終回まで2回を残しているが、来週は早くも安達祐実がカムバックするようだ。
これも予想通りだが、最終回に急に再登場してまとめじみたことを言うのではなく、そのひとつ前から登場するということは何かしら悶着のタネとなるわけで、これも期待をせずにはいられない。

一方、木村佳乃とハギーのロマンスはあっさり終わりを迎えてしまった。
自分には婚約者がおり、もともと来年3月にはひまわりの子幼稚園を辞職するつもりだった、とハギーは緊急保護者会で釈明したが、フットサルの練習で木村とハギーの婚約者が出くわさないのは不自然だから、これはハギーが咄嗟についた嘘ではないかという気がする。
保護者たちは辞めるという言質をハギーからとったことに満足し、それ以上は追及しなかったが、園側の出席者がハギーだけの、こんな保護者会はあり得ないだろう。
園長が当該職員を解雇して不祥事の責任をとらせる、という形を変にショートカットしてしまったので(ひまわりの子幼稚園のキャストはハギーしかいないのだ)、ひどく違和感がある落着の体になった。
かりに木村とハギーが愛人関係にあったとしても、本宮家以外の人間には関係ないのである。
木村佳乃の心情描写には長い時間が割かれていたが、あまり成功しているとは言えなかった。
ハギーに婚約者がいたことにショックを受けていることはわかったが、それを言わなかったハギーを恨むようでもなく、自分の浅慮を後悔するでもなく、ハギーが辞めることについての責任を感じるでもなく、かといって捨て鉢になって茫然としているというわけでもなさそうで、
いっとき夢を見させてくれただけでなく、嘘をついて自分を守ってくれた、ハギーの献身に対する感謝の念ぐらいしか感じられなかった。
やはりお嬢様だから、自分から何か積極的な行動をとることはできないのだろうか(たとえばハギーの再就職先を世話するとか)。
平山広行も、こうした結末に満足しているかどうか疑問である。

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