『告白-25年目の秘密-』(2026)には、25年前から続く二人の男の執着がある。一人は、野瀬麻里子(岡崎紗絵)を見つめてきた雪村爽太(松村北斗)。そしてもう一人は、その母・恭子に愛を求めた佐倉泰輔(玉山鉄二)だ。麻里子と恭子を岡崎紗絵が二役で演じることで、画面上では同じ顔に二人の男の執着が重なる。
雪村は25年間、麻里子を見守ってきた。しかし、正体を隠して彼女を助けていたからといって、ただちにヒーローにはなれない。ドラマの中盤、麻里子は自分の気持ちや行動を先回りされていたと知り、彼を糾弾する。
この「当人が望まない守り方」を何と呼ぶべきか。そして、誰かを危機から救う人は、本当にヒーローなのか。
今回は、『ホームルーム』『マッチング』、そして『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』をたどりながら、守るという行為の中に潜む欲望を考えたい。最後に、いったん去った雪村と麻里子が一年後に再会する『告白』の幕切れの場面に戻ってこよう。
告白-25年目の秘密-(2026)/ホームルーム(2020)/マッチング(2024)/スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2022)
ヒーローは危機を作っていないか:『ホームルーム』

ホームルーム(2020)
愛田が欲しいのは、幸子の安全ではなく、危機に陥った幸子を救い、感謝される自分である。幸子は彼を慕っているが、自分が助けられるために傷つけられていたとは知らない。事実を隠して得た好意を、彼女が愛田を「選んだ」証拠にすることはできないだろう。
この構図を、6年後の『告白』に重ねてみよう。
雪村(松村北斗)は、麻里子(岡崎紗絵)が困る前に手を回し、危機から救いながら、そのために何をしたのかを本人には知らせない。愛田と違って雪村は危機を作り出してはいないが、麻里子にとっては、自分の知らないところで人生に入り込まれていたことは、ストーカーを恐怖する対象になり得る。
助けられたという結果だけで、それまでの行為を許せるわけではない。「告白」の中盤で麻里子が雪村を糾弾する場面は、彼の献身を試す最初の場面でもある。拒絶された雪村は、それでも彼女の「ヒーロー」でいようとするのか。
誰がヒーローに見えるのか:『マッチング』

マッチング(2024)
ところが、輪花を襲う影山から彼女を救うのは吐夢だった。危険に見えた男が助けに現れ、頼れるはずの男が危険だったのである。ここで観客が見直すのは、吐夢だけではない。彼を怖がり、影山を信じた自分たちの判断でもある。
とはいえ、吐夢が輪花を救ったことで、それまで彼女に与えた恐怖が消えるわけではない。輪花の意思を無視して追いかけたことと、彼女を危機から救ったことは、両方とも起きた事実だ。『ホームルーム』では救出そのものが愛田の仕組んだ芝居だった。『マッチング』では救出が現実に起きる。それでも「助けたのだからヒーローだ」と言い切るには、何かが引っかかる。
『告白』もまた、観客の第一印象を利用している。
25年間の片想いを隠し続ける雪村はいかにも怪しく、それに対して、連続ドラマWから飛び入り出演しているかのような捜査一課の刑事・佐倉は、麻里子を守ってくれそうな顔の持ち主である。
ドラマ後半、佐倉が麻里子の継母・サユリ(水野美紀)を殺す姿が描かれることで、その印象は覆る。だが、雪村が麻里子を救ったことは、彼女が感じた恐怖への答えになるのだろうか。
守るために姿を消すのは誰の選択か:『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2022)
ところが、カフェで元気に働くMJを前にして、ピーターは用意していた言葉を飲み込んでしまう。自分との関係を取り戻せば、彼女を再び危険に巻き込むかもしれない。そこで何も告げずに去ることは、ピーターにとって苦しい選択であり、ヒーローらしい自己犠牲のようにも見える。
だが、MJはその理由を知らない。二人の過去を知ったうえで彼と生きるかどうかを決める機会も、そこにはない。ピーターはMJを守ろうとして、彼女の人生から自分を消した。その決断には、相手のためを思う気持ちと、相手の選択を自分が引き受けてしまう危うさが同居している。
『告白』の雪村も、クライマックスで麻里子を守ったあと、「僕の25年の恋は、終わった」と口にし、彼女の日常から去った。だが麻里子は、雪村が何をしてきたかを知り、一度は彼を拒絶している。だからこそ、エピローグで描かれた「1年後の再会」は、守った男へのご褒美では終わらない。雪村が身を引いた先で、今度は麻里子が何を望むのか。その答えを、彼自身も待つほかないのである。
「運命の人」を決めるのは誰か:『告白-25年目の秘密-』

告白-25年目の秘密-(2026)
一方、雪村が見つめてきたのは麻里子である。しかし、佐倉と対決して彼女を救ったからといって、雪村の25年間が正しかったことにはならない。『ホームルーム』の愛田は危機を自ら作ってまでヒーローになろうとしたし、『マッチング』の吐夢は実際に輪花を救っても、彼女を怖がらせた過去を消せなかった。『ノー・ウェイ・ホーム』のピーター・パーカーも、MJを守るためとはいえ、彼女に相談することなく二人の別れを決めた。救ったという事実は、それ以前の行為を無条件に正当化してはくれないのである。
雪村にも、その問題は残る。麻里子は彼の先回りを知って怒り、拒絶した。それでも雪村は、自分が守ってきたことを理由に彼女の愛を要求しない。ドラマの終わりに、彼は恋の終わりを口にして、いったん彼女の前から去る。「運命の人になる」と決めた男が、ここで初めて、その答えを自分では出せないことを引き受けるのだ。
1年後、南房総市に移住した雪村の前に麻里子が現れるという、少々夢想的なエピローグが描かれる。そこで麻里子は彼をまっすぐ見つめ、雪村は「まだ」運命の人ではない、と伝える。
その言葉は、25年の執着への断罪や赦しでもなければ、命を救ってくれたことへの返礼でもない。雪村が「運命の人」になるかどうかは、これから麻里子自身が決める。その余地を残したところに、このドラマの結末がある。

