『昨日の私にサヨナラを』ってどんなドラマ?
走ることをやめた日、人生はどこへ向かう?
夢のない上京は、少女たちを何に変える?
渡辺満里奈が、将来を期待されながらも挫折を抱えるヒロインを瑞々しく演じる青春群像劇。今井詔二の脚本、小島穹と寺山彰男の演出が、華やかな東京への憧れだけでは済まない若者たちの現実を、ほろ苦い人間ドラマとして映し出す。
舞台は、見知らぬ女性たちが隣人として暮らす東京のマンションと、輪子が足を踏み入れるアスレチッククラブ。友情はすぐに心の支えになる一方、仕事には無神経な大人たちの視線と理不尽さが待ち受ける。夢を失った痛み、故郷の家族から切り離された不安、互いに異なる悩みを抱える仲間の距離感が、きれいごとではない成長の手触りを生む。
あらすじ
キャスト
永島輪子 - 渡辺満里奈
杉本忍 - 松本伊代
岡田頼子 - 森川由加里
沢井 - ラサール石井
高島純一 - 沢向要士
村田加奈 - 大川陽子
みどり - 筒井由美子
由美 - 久野真紀子
三上達彦 - 松村雄基
永島宏子 - 島かおり
永島保 - 名古屋章
水谷 - 仲本工事
光子 - 仁藤優子
感想
90年代にドラマを見なかった私は、渡辺満里奈という人をよく知らず、森川由加里という人も名前すら知らない。
一見、90年代初頭のトレンディ青春ドラマふうの本作には、じつは「自己決定権の回復」という主題がある。失敗だらけで空回りする日々(昨日)を否定するのではなく、それを一度受け入れた上で、「私の人生は私が選ぶ」という力強いメッセージを訴えている。
「昨日の私」とは「誰かが用意したレールの上を歩いていた自分」「他人の評価・期待に縛られて焦っていた自分」を指すのだろう。同じマンションに隣人同士が、過去のしがらみや失敗による自己嫌悪を乗り越え、自分の意志で新たな一歩を踏み出すことを「サヨナラ」と呼んでいる。
渡辺の場合は、父親(名古屋章)の期待に応えられないプレッシャーから長距離をやめて上京したのだったが、最終話で名古屋は胃がんで倒れ、「自分の夢を押し付けてすまなかった」と謝罪する。名古屋にコーチを託された別のランナーの「ただ走ることが好き」という純粋さに触れた渡辺は、陸上への熱意を再発見し、もう一度、市民ランナーとして自分のために走ろうと決断する。
それぞれ異なる悩みを抱えるあとの2人(森川由加里と松本伊代)も、物語の中で、互いを鏡のようにして成長していく。森川は職場の噂や世間体に流されそうになり、見合い結婚へと逃げようとしたが、徐々に自分の仕事や生き方に責任を持つようになる。恋愛依存や現実逃避に陥っていた松本伊代は、主体的な恋愛や選択ができるようになる。
この時代、3人が手を取り合う3人の関係はまだシスターフッドとしては描かれることはなかった。変態紳士が象徴する都会の冷たさや、セクハラ、愛人の自殺未遂といった不条理を乗り越え、それぞれのやり方で「昨日の自分」を脱ぎ捨てていくプロセスには、なかなか切実なものが感じられた。


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