2011年のドラマドラマ2010年代のドラマ

冬のサクラ

3.5
今井美樹(冬のサクラ) 2011年のドラマ
今井美樹(冬のサクラ)
『冬のサクラ』は、2011年1月16日~3月20日の毎週日曜21:00-21:54にTBS系の「日曜劇場」枠で放送。主演は草彅剛。

「冬のサクラ」ってどんなドラマ?

あらすじ

雪の降り積もる山形で、母親の介護をしながらガラス職人をしている稲葉祐(草彅剛)は、今まで一度も恋をしたことがなかった。一方、石川萌奈美(今井美樹)は“冬に咲くサクラ”を見るため山形を旅していたが、ひったくりに遭って怪我をし、祐が萌奈美を助ける。ショックで記憶が失った萌奈美は祐の家で暮らすことに。身元を確認できるものもなく、唯一の手がかりはデジカメに写っていた桜の枝の写真。それは冬に花を咲かせる「啓翁桜」だった。祐は「きっとそのうち思い出せる時が来る」と微笑む。
しばらくして祐の母親が亡くなり、葬儀に出るため東京の病院で研修医をしている弟・肇(佐藤健)が帰ってきた。兄の萌奈美への淡い思いを感じた肇は、自分や母に対する祐の偽りのない優しさを萌奈美に伝える。肇には向井安奈(加藤ローサ)という恋人がいて、二人は兄たちをそっと見守ろうとする。
一方、自分には夫と娘がいることを思い出した萌奈美を、夫・航一(高嶋政伸)が迎えにやってきた。胸を締めつけられる思いで東京に戻る萌奈美。祐は大丈夫と優しく微笑み彼女を遠くから見送ったが、東京にいる航一が祐の存在に気づき、豹変していく……。

感想

ファーストインプレッション

韓国ドラマを見る習慣がないのだが、これってパチンコにもなってるあの「冬のソナタ」なの? チェ・ジウも出てくるようだが…

とにかく一話だけの記憶喪失、おまけに不治の病という大時代な設定と展開だが、それを除くと、初回は「マディソン郡の橋」を思わせる。
「一生かけて反芻する一夜の恋」が「マディソン郡の橋」だが、ここで描かれているのも、そうした類の中年女性の夢想である。
48歳の今井美樹(ヒロインの年齢設定は45歳)という大ネタをもってきてそういうベタなものをやる、という心臓はあっぱれだが、せっかくの草彅君の演技が今井美樹に振り回されるのは残念である。

さて初回で死んだ草彅君の母である吉田日出子は、若い頃恋多き女として好き勝手した人物であり、現に草彅君と佐藤健は父親が違うし、誰が父親かもわからないという(わからないのなら、どうして違うとわかるのかとも思うが…)。
今後もドラマが大時代に展開していくとしたら、新たな異父きょうだいが現れることは確実だろう。
今井美樹がそうだなんてことが、一体起こるだろうか。
ちょっと目が離せない。

第2話

楳図かずお作品を思わせる、高嶋政伸の逆光三白眼の怖い演技は、冬彦さん並みのインパクトがあるだろう(といっても、かつての冬彦さんのドラマを私は見ていないのだが)。
美しい隣人」の仲間由紀恵とともに、今季の怖い演技の白眉というわけだが、どちらもリアルでホモセクシャルと噂される人という偶然が、どこか現実離れしたハイパーリアルな演技につながっている気がする。
リアルということでいえば、今井美樹は現実でも異相の夫(布袋寅泰)を伴侶にしているのだが…

今井が置かれている状況は、夫が高嶋政伸であるということを除けば、ごくありきたりなもので、江波杏子の姑などいかにも手がたい。
白羽ゆりのサディスティックな愛人ぶりは少し楽しみかな。

チェ・ジウは何か役を与えられるのだろうか?

第3話

高嶋政伸の演技は、おそらく本人がたっぷり楽しんでいて、写真にシャーペンをブスブスなんて、あきらかに過剰なのだが、ベタベタ大時代ドラマだから、吹き出すほどでもなくなっている。
そもそもこの夫、妻の支配欲は人一倍強いのに、本人の体調不良にはなぜかまったく無頓着という迂闊なキャラである。
今井美樹も今井美樹で、ここぞというときに高嶋に目撃される間の悪い迂闊な女なのだが、どうせこういうドラマではすべての登場人物が迂闊なのである。

このドラマの最大のネックは、今井美樹がどこまでイケてるか、という点であり、しばしば、ビミョーなシーンが散見される。
今井については、80年代後半にギョーカイにいた知人が、その「いい女」っぷりに感嘆していたものだが、歌手としての今井美樹はともかく、先日、「想い出に変わるまで」という90年のドラマを再放送していたのを見て、やっぱりビミョーだと思わざるをえなかった。
ドラマデビュー作は山田太一の「輝きたいの」(1984年)の女子レスラー役なのね。
白羽ゆりは38歳という役どころだが、実際は31歳である。
これはずるいww

第4話

佐藤健の弟との今ひとつしっくりこない異父兄弟ぶりが、草彅剛のまだ見ぬきょうだいが誰なのかと考える楽しみを与えてくれるのだが、高嶋政伸こそが彼の兄であるという可能性を捨てきれない。
江波杏子の若き日の過ちがそのような事態を招いているという可能性である。

米沢牛を使っていたであろう山形市内のフレンチレストランで、高嶋が強調した自分と草彅との「棲む世界」の違い、そして、父親の不明を草彅があらためて高嶋に告白した展開が、ドラマ後半での高嶋の苦悩を前駆しているようにも思えるのである。

今回、今井美樹の病気を知るにいたった高嶋は、妻への異様な執着という一点以外で、単純なモンスターであることをやめているのだ。

第5話

いつ出るかと思って見ていたが、今週は江波杏子が姿を見せなかった。
草薙君に電話をするところ、お台場での逢瀬、逆に草薙君から電話がかかってくるところ、娘に進路は自分の好きなことで決めなさいと諭すところなど、ここぞというところで登場してほしかった。

手術は自分の意思で決めると、おそらく初めて我を通した妻にたじろぐ高嶋政伸であったが、ひと晩熟考して、改めて今井美樹を説得する。
この高嶋が何を考えているのかは、正直、わかるようでわからない。妻に執着しているようにも見えるが、自らの手術で助けようとはさらさら思っていないようだし、最愛の娘に比べれば妻はどうでもいいというようなことも白羽ゆりに語っている。そのわりに娘を溺愛しているような描写はとくにないのである。
DV夫の心性は不明だが、根底にあるのは愛情ではなく、支配欲だというキャラ設定なのであろう。

白羽(この女も何を考えているのかよくわからない)に、あなたは草薙君に勝てないと言われて、思わず首を絞めてしまうほどかっとなるのだが、支配が目的であれば、もちろん手術で今井の記憶を消し去り、今井を生ける骸とすることを選ぶに決まっている。
視聴者にとっては自明なことに今井も草薙君も気づかないという、テレビ的な「志村!後ろ!後ろ!」な状況なのである。

予告編によれば、高嶋の攻撃を受けることになる佐藤健にスポットが当てられる。これまでのところ草薙君の最大の理解者である加藤ローサは、恋人の危機に際しておそらく態度を変えるだろう。

第6話

番組後の「情熱大陸」で、今井美樹の生活を紹介していて、布袋寅泰(異相だが常識的である)と一緒にスタジオにこもったり、小2の娘と電話と話していたりする、47歳の今井は、石川萌奈美のような変な屈託などない“いい女“っぷりだった。やっぱりドラマの登場人物って変である。
ていうか、人間の内面は大抵みんな変なのだが、ドラマはそれをわかりやすくするため、それを全部外に出しているのだ。

……さて、高嶋政伸はシリツで今井の記憶を消し去ってしまおうとも考えている(らしい)。
政伸はまた草薙君にも妻の記憶を捨て去れと強要しているので、ここでは三人とも、今井の記憶に強く拘泥しているとわかる。
今井本人にとってのそれは、まずもって娘の記憶である(と今井は言う)が、政伸と草薙君にとってのそれは、何だかよくわからない。
政伸のほうは今井を支配するために記憶が邪魔になるようだ。

ドラマで人が誰かの記憶を消したいと考える場合は、大抵、犯行現場を見られたときであるが、政伸が何を隠したいのかはわからない。
次週では、白羽ゆりとの愛人関係が暴露されるようだ(この愛人関係もわからない。白羽の側は金目当てだしても、政伸はいつも白羽を邪魔にしていて、特に愛人を必要としている様子がない)。

さらに、草薙君にとっての“今井の記憶“の意味となると、もっとわからない。
草薙君は今井がしたいようにさせてやりたいだけなので、本当は今井の記憶が失われても構わないと考えているかもしれない。
そういうことから、まず、記憶を喪った今井を山形の雪の町で介護する草薙君、という結末が予測されるが、しかしこの結末は、政伸はともかく、今井もまったく望んでいないものである。三人の希望(もしくは妥協点)が一致するのは、今井が死ぬことによってしかないと思う。

加藤ローサは草薙君の理解者であることをやめなかった。これは佐藤健が草薙君と一話のうちに和解したためである。もっと深刻な亀裂が兄弟間に生じた場合、加藤は佐藤のほうを選ばざるを得ないはずだ。

第7話

人間関係が動いた。
まず、江波杏子が今さらのように息子の異常に気づき、急にいい人になってしまった。
次に、白羽ゆりがついに高嶋政伸との関係をバラしてしまった。娘も今井美樹の死期を知ってしまい、圧力をかけるにも佐藤健も病院をやめてしまったので、もはや高島は警察にでも頼るほかに打てる手がなくなってしまった。
順当な展開と言えるが、もはや草彅君の異父兄弟が現れるには残り回数が少なくなってしまった。
記憶を喪うことをおそれる女であるにもかかわらず、当初の記憶喪失事件ももはや関係ない設定となりはて、このままでは、高島がモンスターDV夫であるというだけのドラマに終わりそうである。

残念だ。

最終話

最後の最後になって、高嶋政伸が稲葉兄弟(草彅君と佐藤健)の兄であることが明らかになった。
高嶋政伸と佐藤健の血液型は日本に数十人しかいないOh型であった(Ohは現在の人類に進化する以前の血液型と言われ、ボンベイに比較的多く見られることから、ボンベイブラッドと呼ばれるそうだ)。
また江波杏子は「一番大切な人に裏切られた」と琴ちゃんに漏らしている。
したがって、血縁関係は以下のようであると推定できる。

 篠田三郎(?歳)
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 ├―――草彅剛(36歳)
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 吉田日出子(63歳)
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 ├―――佐藤健(24歳)
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 高嶋父=江波夫
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 ├―――高嶋政伸(41歳)
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 |   ├―――琴音(13歳)
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 |   今井美樹(45歳)
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 江波杏子(71歳)

佐藤と高嶋の年齢差が17歳とかなり大きいが、男だから不可能なことではない。
高嶋は江波が30歳の時の子供であり、佐藤は吉田が39歳の時の子供である。
高嶋父=江波夫は、高嶋が生まれてから17年後に39歳の吉田と浮気をしたことになる。
その時、江波は47歳であり、吉田は4歳の草彅君を育てていたはずである。
でんでんと大島蓉子は、これらの経緯をすべて知っていたのではないか(この夫婦は吉田日出子の血縁である)。

…しかしながら、こういったことはドラマの展開に何の影響ももたらさなかった。
草彅君と佐藤が吉田を挟んで異父兄弟としての絆を築いたように、これから、佐藤と高嶋もまた、高嶋父=江波夫を挟んで異母兄弟としての絆を築いていくのかもしれない。
こういったことはすべて運命ということの謂であるかのようである。

さて、今井美樹は「私はあなたを愛しています」という走り書きを草彅君が撮った桜の写真の裏に記して死んだが、草彅君は今井がこと切れるまで「愛している」という言葉を封印していた。
このドラマは、愛し合うふたりがその感情を言葉にして伝えることをしない物語として構想されたとおぼしいが、見ている側としては、どちらかというと、ドラマが始まって以来、今井は草彅君に感謝こそすれ、はたしてそういう感情をもっているのか、疑問を持たざるを得なかった。
中盤から後は、自分がもうじき死ぬという恐怖に支配されていたし、その中で感情の動きらしいものが見られるのは琴ちゃんへの愛情だけだった。
草彅君の献身に対して報いることができるのは先のひとことだけなのだが、これは「言わざるを得なかった」感じに見える。

最終回スペシャルで、登場人物はすべて良い人になってしまった。
高嶋を刺した白羽ゆりだけが改心しない人生を歩んだかに見えたが、これも高嶋に諭されて涙を流していた。
今井の最期を看取るために、琴ちゃんも江波杏子も草彅君の家で暮らせばいいのに、と思ったが、それなら高嶋の家に草彅君が住み込みで看病するのも一緒である。
それができないのは感情のもつれがあるからで、今井は離婚せずに石川家の人間として死んだが、全員が良い人であるにもかかわらず、感情のもつれを理由に人間関係を整理しないままに終わる、という大人の結末を迎えたことは興味深いと言える。

「冬のサクラ」を観るには?

「冬のサクラ」作品情報

キャスト

稲葉 祐(ガラス細工職人) – 草彅剛
石川 萌奈美 – 今井美樹
稲葉 肇(祐の弟で研修医) – 佐藤健
向井 安奈(肇の恋人で病院の食堂勤務) – 加藤ローサ
■石川家
石川 航一(萌奈美の夫で病院院長) – 高嶋政伸
石川 琴音(航一と萌奈美の娘で中学1年生) – 森迫永依
石川 章子(航一の母で病院理事長) – 江波杏子
■稲葉家
稲葉 百合(祐と肇の母) – 吉田日出子
稲葉 哲也(祐と肇の叔父でガラス工場経営者) – でんでん
稲葉 香織(哲也の妻) – 大島蓉子
■その他
中里 次郎(祐の幼馴染みで駐在) – 山崎樹範
白石 理恵(萌奈美の友人で料理教室経営者) – 白羽ゆり
村瀬 千尋(ガラスギャラリー店員) – 遊井亮子
橘 真人(萌奈美の担当医) – 東根作寿英
山田 裕之(病院医師) ‐ 桜井聖” target=”_blank”>
おばあさん – 森康子
女性 – チェ・ジウ(友情出演)
男性 – クォン・サンウ (友情出演)

スタッフ

企画 – 石丸彰彦
原案 – 戸部真里香
脚本 – 高橋麻紀
演出 – 山室大輔吉田健
音楽 – 市川淳、沢田完
主題歌 – 山下達郎「愛してるって言えなくたって」
プロデューサー – 高橋正尚韓哲
製作著作 – TBS

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