この回の邦題は「不完全な真実」となっているが、原題は「真実をくれ」というのを歌詞ふう(?)に記した「Gimme Some Truth」で、グッゲンハイムともアル・ゴアともまるで関係ない。
ディミトリたちはカラオケバーで「Like a Rolling Stones」を歌っていたが、これはこの40年間、アメリカ人が最も好み続けてきた曲である(「Gimme Some Truth」というフレーズはない)。
その後起こる地下駐車場の銃撃戦で、ディランのでもストーンズのでもなく、ディミトリたち自身のカラオケヴォーカルをBGMとして据える感覚は、日本人には、とても共感できないものなのではないかと思う。
同じように、ゲイでない者にとって、ジャニスとマヤの関係もわからない。
ジュードーの試合で出会ったこの二人は、互いが同好の士であることを一瞥で見抜くのだが、ベルクソンの言う“堅い林檎という真実”をキャッチしあうような、繊細で傷つきやすいものとして、レズビアンの関係性を小説に描いたドナルド・バーセルミの泣ける短編を思い起こさせる。
それにしても、モザイク掲示板というのはfacebookを思わせる。
アメリカではネットでは、やはり実名が基本らしいのだ。
第6話
サイモン・キャンポスという学者が登場し、ロサンジェルスに向かう夜行列車の中で金髪美女をナンパして、「二重スリット実験って知ってるかい?」と声をかけると、「穴がふたつなんでしょう、試したことあるわ」と女が答える。
サイモンは続けてシュレーディンガーの猫の話などをしているので、量子物理学的な実験によってフラッシュフォワードが引き起こされたらしい、ということがわかってきた。
前回は「Like a Rolling Stones」のカラオケが銃撃戦に重ねられるという異様なシーンがあったが、今回は、ハロウィーンの晩にジョセフ・ファインズが怪しい男たちを追跡するBGMとしてデヴィッド・ボウイの「Scary Monsters」が選ばれている。全然マッチしないと思うのだが、どういう意味なのだろうか。
ディミトリたちは、ジョセフ・ファインズが見たビジョンで壁に貼られていたメモから、手が青く塗られたイアン・ラザフォードの死体を発見するのだが、前回でクレメンテ議員が指摘したように、このような捜査手法は恣意的にすぎる。
ヴィジョンで見た映像からその証拠を集めるという手法にはパラドックスがあり、おそらく、オリヴィアがロイド・シムコーと恋に落ちる(?)ことになるのも、そもそもヴィジョンを見たことが原因であるのは間違いない。
シュレーディンガーがパラドックスと呼んだのは、量子力学における確率解釈の異常な結論のことなのだが、このドラマは、箱の中の猫のように、生きていると同時に死んでいるという重なりの中に生きる人々の人生を描いているようだ。
第7話
ヴィジョンを見なかった人が集う「alreadyghosts.com」ドメインは実在しているのだが、アクセスするとabc.go.comにリダイレクトしてしまうww このドメインに対して、生ける亡霊.comという字幕が出るが、捨て鉢になっているニュアンスはいまいち伝わっていないんじゃないかなあ。
ヴィジョンを見なかったという事実にこだわるディミトリと、恋人ゾーイは、結婚式の招待状印刷の打合せのために待ち合わせをする。
おぼえにくい名前のカップルはうまくいくのよ、とゾーイは言うのだが、たしかにDemetori NohとZoey Andataというのは、フツーの英語名前ではないのだろう。ディミトリはコリア系なのだろうが、ゾーイというのはどこ系なのだろうと思って調べてみた。女性名エヴァのギリシア語形ゾーエーに由来するものらしく、「生命」を表すことから動物園(zoo)の語源でもあるらしい。
サリンジャーの小説に出てくるなつかしいグラース家の五男、フラニーの兄も同じゾーイー(Zooey)である。
さて、ビジョンの中でMI6のフィオナ・バンクスと打合せをしていたアル・ゴフは、ルールを変えるんだと言って連邦捜査局ビルの屋上から飛び降りて自殺してしまった。奇跡のようなことが起こって死なないのかと思ったが、アルはあっさりと死んだ。
このようなことがこれまで実験されなかったのは不自然なのだが、ともあれ、ビジョンの未来は変更することができるということが証明されてしまった。
これ、あとで説明がつくんだろうな。
ダウンタウンのブルーハンドへ潜入するアルとディミトリ、マークだが、上司に内緒の捜査ということなのか、オフの服装で待ち合わせる。
セーター姿のアル・ゴフ、革ジャンで決めているディミトリ、そしてマークは「FBIのくせにポリスTシャツかよ!」とからかわれていた。
こういう余計なところがおかしいドラマである。
第8話
ロイド・シムコーとサイモンのポーカーシーンが延々と入るが、あまり意味がない。
どうも、わざわざB級に仕上げようとしているようなドラマである。
ソマリアの件などちっとも捜査が進展しないのはどういうことか。



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