『パニック・ルーム』ってどんな映画?
鉄壁の避難室が、母娘を閉じ込める。
守るための部屋に、強盗たちの狙いがある。
ジョディ・フォスターが、離婚直後の母親の恐怖と判断力を切迫感たっぷりに体現。デヴィッド・フィンチャー監督が、豪邸という広大な舞台を逃げ場のない密室へと反転させた、研ぎ澄まされたホームインベージョン・スリラーだ。幼いクリステン・スチュワート、フォレスト・ウィテカーらが加わり、母娘と侵入者それぞれの思惑を緊張の糸で結び上げる。
監視カメラが見せる屋敷の死角、厚い扉越しに交わされる駆け引き、部屋の内と外で逆転していく優位――安全装置だったパニック・ルームが、欲望の在りかへ変わる設定が秀逸。空間の構造を自在に見せる映像と、わずかな判断が状況を一変させる演出が、最後まで息を詰めさせる。
あらすじ
夫と離婚したばかりのメグ・アルトマン(ジョディ・フォスター)は、11歳で糖尿病を抱える娘サラ・アルトマン(クリステン・スチュワート)とともに、ニューヨークの高級住宅街にある4階建てのブラウンストーンへ引っ越す。以前の住人だった富豪が改装したその屋敷には、非常時に住人を守るため、監視モニターや頑丈な扉を備えた密室「パニック・ルーム」が設けられていた。
入居初日の夜、前の住人の孫ジュニア(ジャレッド・レト)は、屋敷に隠された巨額の財産を持ち出そうと計画する。パニック・ルームの設備に通じたバーナム(フォレスト・ウィテカー)と、銃を携えたラウール(ドワイト・ヨアカム)を連れて侵入したジュニア(ジャレッド・レト)だったが、屋敷にはまだ母娘がいるとは知らなかった。物音と監視カメラから異変を察したメグは、サラを連れてパニック・ルームへ逃げ込む。
しかし、強盗たちの目的の品は、皮肉にも母娘が立てこもった部屋の床下にある金庫の中だった。外部へつながる専用電話は未接続で、サラに必要な薬も部屋の外に残されている。侵入者たちは密室を破る方法を探り、メグはモニターで相手の動きを読みながら、娘を守るために屋敷の設備を利用して反撃の糸口をつかもうとする。
キャスト
メグ・アルトマン - ジョディ・フォスター
サラ・アルトマン - クリステン・スチュワート
バーナム - フォレスト・ウィテカー
ラウール - ドワイト・ヨアカム
ジュニア - ジャレッド・レト
スティーブン・アルトマン - パトリック・ボーショー
リディア・リンチ - アン・マグナソン
エヴァン・カーランダー - イアン・ブキャナン
キーニー - ポール・シュルツ
スティーブンの恋人 - ニコール・キッドマン(クレジットなし)
感想
コロンビアが記録的な大金で手に入れたデヴィッド・コープの脚本による本作の監督を引き受けたとき、フィンチャーは全ショットをコンピュータ上で計画して撮影に臨んだという(コッポラが『ワン・フロム・ザ・ハート』で挑んだ「コンポーズドムービー」を実践しようとしたらしい)。撮影現場が150もあった前作『ファイトクラブ』と対照的に、ほぼ屋敷内で撮影を完結できると考えたのだろう。CGを用いながらも縦横無尽に屋敷を動き回るキャメラは、そうした監督の意思を示している。
しかしながら、当初、ニコール・キッドマンとヘイデン・パネッティーアの母娘の映画になるはずだったのが、二人とも降板し(ニコールの膝故障)、さらに『セブン』を撮った撮影監督ダリウス・コンジも交代し、フィンチャーの目論見は狂っていく。ジョディ・フォスターの起用は映画に政治性を付与することを意味したし、さらに彼女は妊娠中だった。
本作はある一夜の出来事を描いており、屋敷にはまだ十分な照明が取り付けられていないという設定で、全編、闇が支配している。フィンチャーは当初、ほぼ暗闇のまま撮影しようとしたが(ダリウス・コンジが降りたのもこのへんの意見対立が原因だろう)、さすがにそれでは映画にならないので、照明チームは反射板と低照度の拡散光を用意した。おまけに防犯カメラの映像は光を拾いすぎるので、本編撮影後に防犯カメラ用の撮影をしなければならなかった。これらによってテイク数は必然的に増え(ジョディがパニックルームに糖尿病の医療バッグを滑り込ませるシーンは103カットも撮影された)、ジョディの出産後も追加撮影をしなければならなかったために、クランクアップまで1年近くかかった。成長期のクリスティン・スチュワートは8センチも背が伸びて、最後にはジョディ・フォスターを見下ろすほどになったという。
こうして、フィンチャーの撮影現場はまたしても大混乱だったのだが、『エイリアン3』とは異なり、完成した映画がそんな舞台裏を感じさせない洗練したものに仕上がっているのは、この監督の成長ぶりを意味しているように思う。
『パニック・ルーム』を観るには?
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『パニック・ルーム』作品情報
監督 – デヴィッド・フィンチャー
脚本 – デヴィッド・コープ
撮影 – コンラッド・W・ホール、ダリウス・コンジ
編集 – ジェームズ・ヘイグッド、アンガス・ウォール



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