『不在宴会 死亡記事の女』ってどんなドラマ?
「出席したこと」にした宴会が、男を逃がさない。
出世か、告白か――偽りのアリバイが首を絞める。
松本清張の短編を、西岡琢也の脚本と榎戸耕史の演出で映像化した社会派サスペンス。将来を約束されたエリート官僚が、ほんの一夜の密会と保身の判断から、地位も家庭も揺るがす罠へ踏み込んでいく。清張作品らしい、組織の思惑と個人の欲望が冷たく絡み合う一編。
舞台は視察先の温泉宿、そして官僚と企業の利害が交錯する世界。殺人の目撃者でありながら名乗り出られない主人公の焦燥を軸に、口裏合わせという小さな嘘が恐喝と疑心暗鬼を呼び込む。誰が何を知り、どこまで利用しようとしているのか。密会の代償がじわじわと迫る緊迫感が見どころ。
あらすじ
キャスト
魚住一郎(交通省局長) - 三浦友和
魚住早紀子(魚住の妻) - 田中好子
鶴原(バス会社支所長) - 平田満
五十畑信介(早紀子の父で衆院議員) - 竜雷太
小倉麻子(鶴原の愛人) - 小嶺麗奈
米村(五十畑の秘書) - 浅野和之
下村(少年野球チームの監督) - 宇梶剛士
松島 (福島南署 刑事) - 六平直政
浅田(同) - 小木茂光
小宮山(同) - 山中聡
卜部(同) - 米山善吉
長谷川茜(クラブホステス) - 中島ひろ子
佐藤恵子(スナックホステス) - 松本詩代
向井(恵子の内縁の夫) - 金山一彦
魚住一之(魚住の息子) - 伊藤大翔
魚住布美 (魚住の娘) - 寉岡瑞希
感想
清張お得意の「後ろ暗い秘密をもつ昭和の官僚が発覚の恐怖に怯えながらも、最終的に自滅する」プロットだが、殺人の場所は北九州から福島へ、主人王(三浦友和)の役職も、課長から国土交通省ならぬ交通省の局長に格上げされている。
殺人といっても犯人探しは本筋ではなく(原作の犯人は別人)、タイトルの「不在宴会」も、アリバイというよりも、発覚をおそれる不正のひとつに過ぎない。
主人公は、何度も「世間の目が厳しいので」と口にするのだが、そのせいか、次期事務次官が噂される中央官庁の局長のわりには慎ましく、平田満から口止め料500万円を要求されては途方に暮れ、自分の金では銀座のクラブにも行けず、愛人(松本詩代)は新宿のしけたスナックの女である(それでも、やることはやるという感じ)。おまけに妻(田中好子)の父親(竜雷太)が目を光らせている。
本作の面白さは、この小心な主人公があれこれ悩んだあげく、窮地を脱するためにとった行動が全部無意味だったとわかるクライマックスにある。
たとえば、愛人を露天風呂で殺した犯人に考えをめぐらせて、自分の知っている人物が女の首を絞めているところを想像するのだが、犯人候補(金山一彦、中島ひろ子、宇梶剛士)らがいちいち湯船の湯を波打たせながら松本詩代を殺すシーンが映像化されている(犯人は小嶺麗奈なので、当然彼女もこのシーンを再現している)。
松本誌代
田中好子
平田満が口止め料を要求したのは旅館から逃げた三浦を見ていたからなのだが、じつは会社の金を使い込んでいたという小悪党で、再三の脅迫に怯えた三浦は、子どもの野球の監督・宇梶剛士に殺しを依頼する。それに先立ち、夫の浮気に勘づいた田中好子が仕返しとして宇梶と不倫しているのではないかという疑惑があり、この真相は不明なのだが、田中は借金をしている宇梶に1,000万円を融通してやろうとする。金の出所は竜雷太なのだが、この妻のほうがよほど金の使い途を知っているではないか。
結局、三浦は宇梶に平田殺しを依頼し、完了報告も受けるのだが、その宇梶はまったく関係ない交通事故であっさり死んでしまう。これで秘密を知る者がいなくなったとほっとしたところに、冒頭の不在宴会を追求するために刑事が現れ、三浦は「女を殺していません!」と口走り、逮捕されてしまうのである。
じつは宇梶は平田を殺してなどいなかったこともわかり、要するに三浦は一切罪を犯していなかったのだが、不在宴会や愛人との密会といったスキャンダルが明るみになったために三浦は将来を絶たれ、役人を辞めて今はタクシーの運転手をしている、と語る原作にないサゲのシーンでドラマは終わるのだが、離婚した田中が竜雷太の秘書(浅野和之)と再婚したことなどがさりげなく語られ、秘密とは無縁になって清々している三浦の明るい表情で、ハッピーエンド風になっている。
西岡琢也の腕を感じさせる、しゃれた終わり方である。
途中、小嶺麗奈が意味なく現れて三浦を恐怖させるのが意味がないのだが、これはおそらく大人の事情であると推察される。
小嶺麗奈


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